「お父さんの通帳ってどこにあるの?」
家族がまず探すのは、実は「財産の金額」ではありません。
通帳や保険証券、証券口座の場所です。
自分には当たり前でも、家族には見えません。
机の引き出し。昔の書類箱。スマホのアプリ。
探す場所が分からないまま、手続きだけが進んでいきます。
今、あなたに何かあったら、家族は通帳や保険、ネット銀行の存在に気づけるでしょうか。
生前に必要なのは、完璧な財産目録ではありません。
まずは、家族が探し始められる「道しるべ」を残すことです。
家族のためにやることは3つだけ
1. 金額より「存在」を書く
残高を正確に書こうとすると、手が止まります。
最初は金額なしで構いません。
「A銀行に口座がある」
「B生命の保険に入っている」
「C証券を使っている」
会社名が分かるだけで、家族は確認先にたどり着きやすくなります。
大切なのは、金額よりも「存在」です。
2. 遺言書とは別に一覧を作る
遺言書には、財産の分け方や財産の特定を書くことがあります。
ただし、通帳がどの引き出しにあるか、保険証券をどのファイルに入れているかまで細かく書くとは限りません。
遺言書は、法的な意思。
一覧は、家族が探すための案内図。
役割が違います。
3. 一覧の置き場所だけ伝える
一覧を作っても、見つからなければ意味がありません。
「大事な書類はこのファイルにあるよ」
「保険関係はこの引き出しを見てね」
伝えるのは、この程度で十分です。
中身を全部見せる必要はありません。
エンディングノートを書いている方は、「預貯金」「保険」「証券口座」「重要書類」の欄を使って整理できます。大切なのは、残高を細かく書くことよりも、銀行名や保険会社名、保管場所の手がかりを残すことです。
こんなメモで十分です
きれいな表でなくても大丈夫です。
手書きで、まずはこの程度から始めましょう。
A銀行 普通預金あり
通帳:寝室の棚の青いファイル
カード:普段の財布
届出印:金庫の中B生命 医療保険あり
保険証券:リビング棚の保険ファイルC証券 NISA口座あり
登録メール:普段使っているGmail
大切なのは、現物を一か所に集めることではありません。
(通帳・カード・届出印をまとめて置くと、防犯上のリスクもあります。)
残すのは、現物ではなく場所の手がかりです。
相続でつまずきやすい3つの落とし穴
昔の口座が後から出てくる
遺産分割の話が進んだあとに、古い口座が見つかる。
少額でも確認が必要になることがあります。
話が戻る。
手続きも戻る。
家族の負担が増えます。
保険に気づかない
保険は、銀行口座より見落とされやすいものです。
保険証券がない。会社名が分からない。通知も見当たらない。
会社名だけでも残しておけば、確認は進めやすくなります。
生命保険には、一定の場合に契約照会制度を利用できることもありますが、最初から手がかりがある方がスムーズです。
ネット口座が見えない
ネット銀行やネット証券は、通帳がありません。
スマホやメールの中にあるため、家族が存在に気づきにくい財産です。
ログイン情報そのものではなく、まずは「使っている会社名」を残しましょう。
パスワードは安易に書かない
家族のためでも、IDやパスワードをそのまま紙に書くのは慎重に。
情報漏えいや不正利用のリスクがあります。
まず残すのは、次のような手がかりです。
- サービス名
- 登録メールアドレスの手がかり
- 問い合わせ先が分かる書類の場所
- アプリを使っているかどうか
家族が「存在に気づける状態」を作ること。
まずはそこからです。
最低限、書いておくこと
| 種類 | 書いておくこと |
|---|---|
| 預金口座 | 銀行名、支店名、通帳・カードの保管場所 |
| 保険 | 保険会社名、保険の種類、証券の保管場所 |
| 証券口座 | 証券会社名、NISA・iDeCoの有無 |
| ネット口座 | サービス名、登録メールの手がかり |
| その他 | クレジットカード、サブスク、借入、公共料金の引き落とし |
| 不動産 | 権利証、登記識別情報、固定資産税通知書の場所 |
不動産や借入がある場合は、相続後の手続きが変わることがあります。
分かる範囲で、保管場所だけでも書いておきましょう。
タイプ別の始め方
紙の通帳が中心の方は、銀行名と通帳の場所から。
ネット銀行を使っている方は、銀行名と登録メールの手がかりから。
保険が複数ある方は、保険会社名と証券の場所から。
投資をしている方は、証券会社名、NISA、iDeCoの有無から。
亡くなった後だけではありません。
認知症などで本人が説明できなくなったときも、家族は困ります。
元気なうちに、確認先だけでも整理しておくことが大切です。
よくある失敗
・ 一覧を作ったまま更新していない。
・ 通帳・カード・届出印を同じ場所に置いてしまう。
・ 一覧の存在を家族に伝えていない。
この3つは、実務でも手戻りにつながりやすいところです。
一覧は、年に1回で十分です。誕生日、年末、確定申告の時期など、見直す日を決めておきましょう。
※個別事情で結論が変わるため、最終判断は個別相談で確認を。紛争、税務、不動産登記が関わる場合は、弁護士・税理士・司法書士など各専門家への相談も検討しましょう。
今日の一手
まずは紙を1枚用意して、次の4つを書き出してください。
- 使っている銀行名
- 加入している保険会社名
- 利用している証券会社名
- ネット銀行・ネット証券の有無
余裕があれば、クレジットカード、サブスク、借入、不動産関係書類の場所も追加します。
完璧でなくて大丈夫です。
家族が確認先にたどり着けること。
それが最初の目的です。
まとめ:家族に残すのは「探し方」
相続が始まると、家族は役所や金融機関の手続きに追われます。
そのとき、銀行名や保険会社名、保管場所の手がかりがあるだけで、動き出しやすくなります。
金額をすべて書く必要はありません。
財産を全部見せる必要もありません。
銀行名。
保険会社名。
証券会社名。
ネット口座の有無。
保管場所の手がかり。
これだけで、家族は探し始められます。
相続は、起きてから整えると重いものです。
だからこそ、今のうちに「探す順番」を設計しておきましょう。
まずは、今分かっている銀行名・保険会社名・証券会社名を書き出すところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 遺言書に通帳の場所まで書いた方がよいですか?
遺言書には財産の分け方や財産の特定を書くことがあります。ただし、通帳や保険証券の保管場所まで細かく書くとは限りません。探すための一覧は別に作っておくと分かりやすいです。
Q2. 財産一覧には残高まで書く必要がありますか?
最初から残高まで書く必要はありません。まずは銀行名や保険会社名など、確認先が分かることを優先しましょう。
Q3. IDやパスワードも書いておくべきですか?
IDやパスワードを不用意に書くと、情報漏えいの危険があります。まずはサービス名、登録メールアドレスの手がかり、問い合わせ先が分かる資料の場所を残しましょう。
Q4. 通帳・カード・届出印は一か所にまとめた方がよいですか?
防犯上、すべてを同じ場所にまとめる必要はありません。現物を集めるのではなく、保管場所を一覧にすることが大切です。
Q5. まず何から始めればよいですか?
銀行名、保険会社名、証券会社名、ネット口座の有無を書き出すことです。完璧な目録ではなく、家族が探し始められるメモを作りましょう。


