頼れる家族がいない人への支援を、地域で使える仕組みに
頼れる家族がいない人の入院手続やお金の管理、亡くなった後の対応を、誰が担うのか。ケアマネジャーや地域の支援者にとって、紹介先を探すだけでは解決できない問題です。
2026年10月9日、厚生労働省は市町村職員向けに、こうした人への支援を広げる制度と、実施に向けた準備について説明しました。6月25日に公布された社会福祉法などの改正を、地域で実施するための動きです。
私は、この動きについて、これまで必要な支援を受けられなかった人にも頼める相手を増やそうとする取組として、高く評価しています。ですが一方で、実際に引き受ける人や費用が確保されなければ、身近な支援者が対応を抱え続けることになります。
今回の改正で何が変わるのか。そして、地域で支援を担う私たちは、何を準備すればよいのか。行政書士として気になった点を整理します。
1.頼れる家族がいない人へ支援の対象を広げる
これまでも、認知症や障害などのために、必要な手続や日々の支払いを一人で進めることが難しい人を支える仕組みはありました。
例えば、福祉サービスを申し込みたいけれど、説明や書類を一人では理解しにくい。請求書が届いても、いつ、いくら払えばよいか分からなくなる。そうした人に、社会福祉協議会などの担当者が、申込みや支払いを手伝う。
これが「日常生活自立支援事業」です。本人に代わって何でも決めるのではなく、本人の希望を確かめ、何を手伝うかを一緒に決めて利用します。
そのため、ご本人が、難しい手続を一人でこなせる必要はありませんが(そもそも、それができれば支援は要りませんね)、説明を受けて「何を手伝ってもらうのか」を理解し、「それをお願いしたい」と自分で決められることは必要です。
このような支援は、社会福祉法では「福祉サービス利用援助事業」として位置づけられていました。そして、この事業は、判断する力が十分でない人を対象としていました。www.mhlw.go.jp
しかし、判断する力には問題がなくても、現実に頼れる家族がいないために困る人はいます。
入院の説明は理解できても、病院からの連絡を受ける人がいない。
葬儀について自分の希望は決められても、亡くなった後に実行を頼める人がいない。
今回の改正では、そうした人も支援できるよう、対象と仕事内容を広げています。
資料に示されている支援は、次のとおりです。
- 日常生活支援
福祉サービスの利用手続、日常的なお金の管理、書類の預かりなどを支援。 - 入院・入所等の手続支援
入退院・入退所の手続を手伝い、緊急連絡先を引き受け、費用の支払いを代行することなど。 - 死後事務支援
亡くなった後の葬儀や納骨、家財の処分などが円滑に進むよう、生前から準備を手伝う。具体例として、これらの契約手続の支援や行政官庁への届出が挙げられている。
事業者は、日常生活の支援に加えて、入院・入所等の手続支援、死後事務支援のどちらか、または両方を行うことになります。そのため、実際に何を頼めるかは、事業者ごとに確認する必要があります。
また、「費用の支払代行」は、本人に代わって支払いの手続を行う支援です。本人が払えない費用を国や事業者が肩代わりすることとは別です。
死後事務支援では、本人の希望を確かめ、葬儀社や家財の片付けを頼む業者との契約を手伝うことなどが想定されています。亡くなった後に、誰が何をするのかを生前に決めておくための支援です。
2.民間サービスでは費用と安全性が課題に
こうした仕事内容から、民間の「身元保証サービス」を思い浮かべる方もいると思います。施設に入る際に、身元保証サービスを利用するように言われた、という話も聞きます。
ただ、「身元保証」という言葉で提供されるサービスの内容は、事業者や契約によって異なります。
緊急連絡先になること。入院や施設入所の手続を手伝うこと。費用が支払われない場合に、保証人として支払うこと。亡くなった後の葬儀や片付けを引き受けること。それぞれ、違う仕事と責任です。
こうした仕事を引き受ける民間サービスには、必要性があります。ただし、利用するには費用がかかります。契約時の料金、月々の利用料、手続や付き添いを頼むたびの料金など、支払い方は事業者や契約によって異なります。その費用を負担できず、必要な支援を利用できない人もいます。
民間事業者にも人件費や実費がかかります。本人が費用を払えず、その費用を負担する人や制度もなければ、必要な支援であっても引き受けることは難しくなります。
今回の改正には、こうした費用の負担が難しい人も利用できる支援を、福祉の事業として広げようとする狙いがあります。
法律上は、利用者の一定割合以上に無料または低額で支援を提供する事業を、「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」として位置づけます。「第二種社会福祉事業」という区分に入り、事業者は都道府県知事に届け出て、指導監督を受けます。
ただし、10月9日の資料には、無料や低額で利用できる人の具体的な所得・資産の基準や、実際の料金までは示されていません。支援を頼むための料金と、葬儀代や家財処分代などの実費を、それぞれ誰がどこまで負担するのかも、今後の具体化を確認する必要があります。
預託金を用意できない人の費用を、国がすべて負担すると決まったわけではありません。この事業の施行日は、法律の公布から2年以内に政令で定める日とされており、10月9日の資料では具体的な日付は示されていません。www.mhlw.go.jp
費用を払えるかという問題とは別に、サービスを安心して利用できるかという問題もあります。
民間サービスの中には、亡くなった後の葬儀や納骨、家財の片付けなどに使うお金を、契約時などにあらかじめ預かるものがあります。このお金を「預託金」といいます。本人が亡くなった後、契約に従って対応を進め、その費用を預けたお金から支払う仕組みです。
死後に必要になるお金を、生前に準備しておくことには理由があります。ただ、実際に使うまで何年もかかることがあり、その間、誰がどのように管理し、何にいくら使ったかをどう確認するのかが重要になります。
こうした多額の預託金を長期間預ける仕組みについては、私は、正直なところ、どうしても警戒してしまいます。
預けたお金が本来の目的に使われるのか。事業者が経営を続けられなくなったら、どうなるのか。契約した本人が確認できなくなった後も、約束が守られるのか。不安になる理由もあります。
実際、2016年には、日本ライフ協会が直接預かっていた預託金約8億8千万円のうち、約2億7千万円が流用され、不足していたことが明らかになりました。公益財団法人という名称があっても、預けたお金が安全とは限らなかったのです。www.cao.go.jp
こうした問題や、長期間にわたる契約、本人が亡くなった後の履行確認の難しさなどを背景に、国は2024年、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を公表しました。
サービスの内容や料金、解約・返金の条件を分かりやすく説明すること、預託金を適切に管理することなどを示しています。支援する事業者が本人から寄付や遺贈を受ける場合など、本人の利益より事業者の利益が優先されかねない場面についても、注意を促しています。
このガイドラインには、既存の法律に基づく義務の説明と、適切な事業運営のための指針が含まれています。書かれた事項が、すべて一律に法律上の義務となったわけではありません。www.caa.go.jp
業界側にも取組があります。全国高齢者等終身サポート事業者協会は、預託金の管理方法や契約内容の説明などについて独自の指針を設け、正会員になるための審査基準としています。ただし、業界団体の審査は国の認定ではなく、個々の契約の安全を保証するものでもありません。www.zenshukyo.org
過去に問題があったことだけで、すべての事業者が危険だとは判断できません。ただし、多額のお金を預け、本人が亡くなった後の対応まで任せる契約です。支援内容、料金、預託金の管理方法、解約・返金の条件は、契約前に確認する必要があります。自分だけでは判断しにくい場合は、契約先以外の専門家にも相談してください。
今回の新しい福祉事業については、2024年のガイドラインとは別に、事業者向けのガイドラインなどを作る予定が示されています。支援を利用しやすくすることと、本人のお金や意思を守ることの両方が必要です。
3.支援を担う準備は、どこまで進んでいる?
今回、評価したいのは、法律への位置づけとともに、試行や人員確保の準備も進めていることです。
社会福祉協議会が日常生活自立支援事業の枠組みを使い、見守り、入院・入所の手続支援、死後事務の支援を試行する事業に、2025年度補正予算で予算措置がされています。
また、2027年度の概算要求には、試行の継続に加え、既存の日常生活自立支援事業の人員体制の拡充や従事者の処遇改善なども含まれています。概算要求は、国の予算として認められる前の段階です。全国で必要な人員や費用が確保されたという意味ではありませんが、実施に備える準備にも取り組んでいます。www.mhlw.go.jp
試行のための予算措置や、人員を確保するための予算要求は、大切な準備です。その予算を実際の支援につなげるには、各地域で対応する職員を確保し、誰がどの仕事を担い、費用をどこから支払い、どこまで責任を持つかを決める必要があります。
例えば、緊急連絡先を引き受けるなら、電話を受けた後に何をするのか、夜間や休日にも対応するのかを決め、対応できる人を確保しなければなりません。入院手続を手伝う場合も、移動や待機を含めて時間がかかります。その仕事を誰が担い、必要な人件費や交通費をどう支払うかまで、具体的に決めておく必要があります。
本人に費用を払う余裕がなければ、本人の負担以外で費用を確保する方法も必要になります。引き受けたい事業者がいても、人手や費用が足りなければ仕事として続けることはできません。
申込みを受ける窓口、支援を担当する事業者、引受先が見つからない場合の相談先も決めておく必要があります。
ここが整わないまま、「新しい支援ができたのだから、必要な人につないでください」と現場に求めれば、相談を受けた人は、紹介したくても紹介できずに困ることになります。
4.ケアマネの負担はどうなる?
その意味で、私が気になるのは、負担がケアマネジャーに集中しないかという点です。
ケアマネの本来の仕事は、介護が必要な人の暮らしや希望を把握し、必要なサービスを組み合わせ、関係者と調整することです。
例えば、訪問介護だけでは食事の用意が難しければ、配食サービスも検討する。日々の支払いが難しくなれば、社協のお金の管理を手伝う支援について相談する。介護保険のサービスに限らず、本人の生活が成り立つ方法を考えます。
ただ、頼れる家族がいない場合、紹介や調整だけでは済まない場面があります。ほかに引き受ける人が見つからず、ケアマネ自身が金銭管理や入院中の用事、亡くなった後の対応まで担っている例があります。
こうした仕事を、「引受先がない」という理由でケアマネが抱え続けることは、変える必要があります。国の検討会でも、ケアマネの本来の業務以外の対応は、ケアマネ個人の問題にせず、市町村が中心となって関係者と話し合い、地域全体で対応を考えるべき課題とされています。中間整理について(報告)2ページ
今回の新事業で、こうした対応を引き受ける事業者が地域に増えれば、ケアマネなど身近な支援者が抱えてきた仕事を引き継げる可能性があります。
一方、相談しても利用条件が合わない、対応できる人がいない、支援開始まで待たなければならない、といったことも考えられます。その間の対応をケアマネが抱え続けるなら、これまでの負担は残ります。そこに申込みや打合せが加われば、負担が増える場合もあるでしょう。
「法律に位置づけられた支援なのだから、利用できるように調整してほしい」と求められても、地域に引き受けられる相手がいなければ、ケアマネの調整だけでは解決できません。それでも、目の前の本人を放っておけず、自分で対応を続ける。私は、そのような状態を心配しています。
もちろん、今回の事業が必ず負担を増やす、ということではありません。必要な支援につなぐ仕事と、その支援を実際に行う仕事を分担できるようになるか、という問題です。
5.地域の分担と費用を、誰が決める?
厚生労働省も、市町村に対し、社協などの実施主体と話し合い、地域で必要とされる支援に合った体制を検討するよう求めています。市町村を中心に、地域の関係者が連携する体制を作る方針も示しています。www.mhlw.go.jp
私は、その話合いに、ケアマネや実際に支援を担う民間事業者の経験も持ち寄る必要があると考えています。
例えば、「入院時の対応を頼めずに困った」という話が出たら、何を頼む必要があったのかを具体的に確認する。事業者は、「この手続なら対応できる」「平日は動けるが、夜間は対応できない」「この仕事には、この程度の時間と費用がかかる」と伝える。その情報をもとに、社協やほかの事業者も含めて分担を考えます。
本人が費用を払えず利用できないのであれば、仕事の紹介だけでは解決しません。自治体にも参加してもらい、既存の事業や予算を使えるか、委託や助成などを検討する必要があるかを考えることになります。
個々の民間事業者への委託や助成が、今回すでに決まっているという話ではありません。支援を実現するために、検討してほしい方法の例です。地域だけでは解決できない問題は、都道府県や国にも伝えていく必要があります。
話し合うだけで終わらせず、担当する人と対応方法を決め、実際に試し、うまくいかなかった点を見直す。その経過を関係者で共有し、次の対応に生かすことが重要です。
私たち地域の民間も、そのために協力できます。
まず、今、引受先がなくて残っている仕事を知ること。そして、自分たちが何を、どの範囲で引き受けられるかを明らかにすることです。対応できる時間帯や地域、必要な人数、時間、費用も伝える。本人の負担だけでは引受けが難しいなら、不足する費用も具体的に示します。
情報を出すだけで予算がつくわけではありません。ただ、実際に仕事をする側の条件が分からなければ、自治体や社協も、何を整えれば支援が可能になるのか判断できません。
条件が整えば、実際に仕事を担う。そして、やってみて分かった問題を関係者に伝え、分担や手順の見直しに協力する。民間が善意で無償の対応を重ねるだけでは、見えない負担を別の人に移すことになってしまいます。必要な費用と責任を明らかにしたうえで、継続して担える仕事にしていく必要があります。
私自身も、行政書士として対応できる契約書の作成や手続について、地域の関係者と話しながら、協力できる範囲と必要な条件を具体的にしていきたいと思います。登記や税務、紛争への対応などは、それぞれ司法書士、税理士、弁護士との連携が必要です。一つの事務所では対応できないことも多く、地域とのつながりが、これまで以上に必要だと感じています。
先に述べたように課題はあると思いますが、それでも私は今回の動きには期待しています。これから試行を通じて、どんな支援に、どれだけの人手や費用が必要なのかを確かめ、国の制度や予算、地域の実施体制に反映していってほしいと思います。
支援できなかった事例も、次の準備に生かせます。何が足りなかったのかを自治体も含めて確認し、人員、費用、手順を見直す。その話合いを誰が進め、決まったことを誰が実行するかまで、地域で決めておく必要があります。
私たち民間も、実際に担える仕事と、担うために必要な条件を伝え、地域で対応できることを増やしていく。そのような形で関われるのではないかと考えています。
地域で身寄りのない方を支援している皆さんと、引受先がなくて困っている仕事や、対応するために必要な条件について、意見交換できればと思っています。
参考資料
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について」(2026年6月25日)
改正法の公布と改正内容。 - 厚生労働省「頼れる身寄りがいない高齢者等への支援について」(2026年10月9日)
新事業の内容、施行時期、自治体の役割、試行事業・予算関係。主に資料記載の6~9、23~24ページ。 - 厚生労働省「日常生活自立支援事業」
従来の事業の対象者、支援内容、契約の仕組み。 - 関係府省庁「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(2024年6月)
民間サービスの契約、預託金管理、寄付・遺贈などへの留意事項。 - 内閣府・大臣記者会見要旨(2016年1月19日)
日本ライフ協会の預託金流用問題。 - 全国高齢者等終身サポート事業者協会「運営方針」
同協会が公表する自主的な指針と審査基準。 - 厚生労働省「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の中間整理について/同検討会の調査・参考資料
ケアマネの業務、実際に担っている対応、地域全体で取り組むべき課題。
※制度・予算に関する説明は、主に2026年10月9日の厚生労働省資料に基づいています。今後への期待や民間としての関わり方は、筆者の考えです。


