社会福祉法等の改正で何が変わるのか――改正の全体像と、相続・終活に関わる変更

これからの暮らしの備え

2026年6月25日、「社会福祉法等の一部を改正する法律」が公布されました。

改正されたのは、社会福祉法だけではありません。介護保険法、老人福祉法、生活困窮者自立支援法など、福祉に関係する複数の法律が対象です。

頼れる家族がいない人への支援を広げること。成年後見制度などの相談体制を整えること。有料老人ホームの運営や監督の仕組みを見直すこと。これらも、今回の改正に含まれています。

まずは改正の全体像を確認し、そのうえで、相続・終活に関係の深い変更を、改正前と比べながら見ていきます。

1.今回の改正は、何を目指しているのか

福祉サービスには、必要な人を支えることと、そのサービスを提供し続けられることの、両方が求められます。

ところが、支援を必要とする人の事情も、サービスを提供する側の状況も変わってきました。

単身世帯が増え、これまで家族が手伝ってきた手続や生活上の用事を、誰も引き受けられない場合があります。介護、お金、住まいなど、複数の問題を抱える人もいます。

一方、人口減少が進む地域では、相談窓口の職員や、介護サービスを提供する事業者の確保が難しくなっています。

これまでも、相談窓口の設置や事業者への支援は行われてきました。しかし、既存の制度や提供方法だけでは、対応しきれない問題が生じています。

今回の改正は、こうした変化を受けて、支援の対象や内容を広げるとともに、相談やサービス提供を続けるための仕組みを見直すものです。福祉サービスの質の確保と、事業の安定した経営基盤の確立を両立させることが、改正の目的に掲げられています。

2.改正全体では、何が変わるのか

主な変更を、これまでの仕組みとの関係から整理すると、次のようになります。

分野これまでの仕組み今回の主な変更
地域の相談・支援体制分野別の相談支援に加え、複数分野を一体的に支援する事業も実施小規模市町村向けに、分野を超えて職員配置や相談支援を行う事業を新設
人口減少地域のサービス提供全国的な介護サービスの基準・報酬体系などに基づいて提供地域の実情に応じた人員配置や報酬の仕組み、市町村の委託による提供方法を追加
家族に頼れない人への支援判断する力が十分でない人への、福祉サービスの利用援助など家族に頼れないことなどによる生活上の支障も対象に含め、入院・入所や死後事務に関する支援を追加
成年後見などの利用支援基本計画などに基づき、相談や関係機関の調整を実施市町村の役割と、中核となる相談機関を社会福祉法に明記
有料老人ホーム届出制度に基づく行政の監督と、指導指針などによる運営指導一定のホームに登録制度を導入し、契約や運営のルールも整備
人材・事業運営人材確保や事業者支援を実施。ケアマネジャーには更新制人材確保や事業者間の協力の仕組みを見直し、ケアマネジャーの更新制を廃止するなどの変更

※改正事項のすべてを掲載したものではありません。ケアマネジャーの更新制の廃止は、研修を受ける必要までなくすものではありません。

既存の制度をすべて置き換える改正ではありません。新しい事業を追加する変更、対象者や仕事内容を広げる変更、これまでの取組を法律に明記する変更が含まれています。guardianship.mhlw.go.jp

ここからは、相続・終活に関係が深い、家族に頼れない人への支援、成年後見などの相談体制、有料老人ホームの三つに絞って説明します。

3.家族に頼れない人への支援を、どう広げるのか

(1)改正前は、誰の、何を手伝う制度だったのか

改正前の社会福祉法は、判断する力が十分でない人に対し、福祉サービスの利用相談や手続、利用料の支払いなどを手伝う事業を、「福祉サービス利用援助事業」と定めています。これは、第二種社会福祉事業の一つです。今回初めて、法律に位置づけられる事業ではありません。mhlw.go.jp

社会福祉協議会などが行う「日常生活自立支援事業」は、この法律の規定に基づいて実施されています。

例えば、福祉サービスを利用したくても申込みが難しい。支払期限を忘れてしまう。通帳や大切な書類を自分で管理することが難しい。そうした人と契約を結び、福祉サービスの利用手続や日常的なお金の管理、書類の預かりなどを行います。

主な対象は、認知症や知的障害、精神障害などによって、日常生活に必要な判断を一人で行うことが難しい人です。ただし、本人との契約による支援なので、何を頼み、どのように手伝ってもらうのかは理解できることが必要です。

一方、判断する力には問題がなく、頼れる家族がいないことだけで困っている人は、従来の事業の対象にはなりませんでした。入院時の緊急連絡先や死後の手続まで、一通り対応する制度でもありませんでした。

(2)今回、対象者と仕事内容をどう変えるのか

今回、法律上の「福祉サービス利用援助事業」について、対象者と支援内容を広げます。名称も「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」に変わります。

対象となる事情には、判断する力の問題に加えて、近くに家族がいないことなどによる生活上の支障を含めます。

支援内容は、次のように変わります。

分野改正前との関係支援内容の例
日常生活の支援従来の支援を引き継ぐ部分福祉サービスの利用手続、日常的なお金の管理、書類などの預かり
入院・入所の手続支援今回、支援の範囲を広げる部分入退院や施設入退所の手続を手伝う、緊急連絡先になる、費用の支払いを代行する
死後事務の支援今回、支援の範囲を広げる部分葬儀・納骨・家財処分の契約手続を手伝う、行政への届出などを行う

新たに広げる支援では、日常生活の支援に、入院・入所の手続支援、または死後事務の支援を組み合わせます。どの組合せで提供するかは、事業者によって異なります。

死後事務では、例えば、生前に本人の希望を確かめ、葬儀や家財の片付けを頼む相手との契約を手伝うことが考えられます。本人が亡くなった後、誰が何をするのかを、あらかじめ決めておくための支援です。

従来の支援を出発点に、手伝いが必要になる理由と、手伝う仕事の範囲を広げる改正と捉えると、違いが分かりやすくなります。

(3)費用については、何が変わるのか

改正前の「福祉サービス利用援助事業」も、無料または低額で支援する事業として法律に定められていました。今回初めて、費用の負担に配慮する仕組みを設けるわけではありません。

一方、改正前の条文には、対象者について「生計困難者」という条件はありませんでした。改正後は、生活上の支障があることに加え、この条件を明記します。mhlw.go.jp

つまり、支援の対象となる事情や仕事内容を広げると同時に、費用を十分に負担できない人への支援として、対象者の定め方も変更します。

ただし、「生計困難者」に当たる具体的な基準や、利用者がいくら負担するかまでは、法律だけで一律に決まるわけではありません。従来の利用者への影響も含め、今後の規定を確認する必要があります。

なお、入院費などの「支払いの代行」は、本人のお金を使って支払う手続を行うことです。本人が払えない費用を、事業者が保証人として肩代わりすることとは異なります。

今回の改正は、国や事業者が本人の債務を一律に保証する制度を設けるものではありません。

4.成年後見などの相談について、市町村の役割はどう変わるのか

(1)相談や調整は、これまでも行われていた

成年後見制度の利用については、これまでも市町村や社会福祉協議会などが相談に応じてきました。

国の成年後見制度利用促進基本計画でも、地域の相談を受け、関係機関を調整する「中核機関」の整備が進められてきました。今回初めて、成年後見について相談できるようになるわけではありません。

ただし、基本計画に基づく取組と、市町村が行う仕事を社会福祉法に明記することは異なります。

(2)相談・調整の役割と、それを担う機関を法律に定める

今回の改正では、市町村に対し、成年後見制度などの適切な利用を支えるため、次の仕事に取り組むよう努めることを定めます。

  • 本人や家族、支援者から相談を受け、情報提供や助言を行う。
  • 支援に関わる機関や民間団体との連絡・調整を行う。
  • 関係者が協力して支援できる体制を整える。

その中核を担う機関として、「地域権利擁護相談支援センター」を設置できる規定も設けます。

これまで計画などに基づいて進めてきた相談・調整の取組を、市町村の役割として社会福祉法に明記する変更です。ただし、相談・調整などへの取組は努力義務であり、センターの設置そのものを全国一律に義務づけるわけではありません。www.mhlw.go.jp

ここでいう成年後見には、法定後見も任意後見も含まれます。

今回の規定によって、初めて任意後見を相談窓口で案内できるようになるわけではありません。また、後見人の権限や任意後見契約の仕組みを、この社会福祉法の改正で変えるわけでもありません。それらを見直す民法等の改正とは、区別する必要があります。

前項の新事業が実際の手助けを行うのに対し、この相談体制は、どの支援が必要かを検討し、関係者と調整する役割を担います。

5.有料老人ホームの運営と監督は、どう変わるのか

(1)改正前も、届出と行政の監督があった

有料老人ホームには、これまでも設置の届出義務がありました。行政には、報告を求めたり、立入検査を行ったり、改善や事業停止を命じたりする権限があります。

また、運営については、行政の指導指針などに基づく指導も行われています。介護付き有料老人ホームなどは、これに加えて、介護保険法上の指定や基準にも従っています。

したがって、「これまでは自由に運営でき、行政の監督もなかった」ということではありません。

(2)一定のホームに登録制度を導入し、契約・運営のルールを強める

今回の改正では、一定の介護が必要な人を入居させるホームについて、届出に代わり、登録を必要とする制度を導入します。対象となる人の状態は、今後、政令で定められます。

登録には5年ごとの更新が必要となり、登録を拒否したり、取り消したりする仕組みも設けます。

届出制度では、行政に設置を知らせ、監督を受けます。登録制度では、それに加えて、登録を受ける条件を満たしているかの審査と、定期的な更新が必要になります。

また、契約前の説明や運営に関する規定も整備します。登録対象外のホームについても、誇大広告の禁止や、契約前の書面交付・説明などを法律に定めます。www.mhlw.go.jp

従来の監督を続けながら、一定のホームには登録を求め、事業を営む条件と契約・運営のルールを強める改正です。

さらに、登録対象ホームの入居者に関する新たな介護支援の制度を設け、利用者負担を求める内容も含まれます。これは、従来の在宅のケアプラン作成などでは利用者負担がないことからの変更ですが、すべてのケアプランを一律に有料にするものではありません。

6.これらの変更は、現場で何を変える可能性があるのか

改正前後を比べると、三つの変化が見えてきます。

まず、家族に頼れない人への支援です。これまでの福祉サービス利用援助は、判断する力が十分でない人を中心としていました。改正後は、家族に頼れないことなどで生活に支障がある人も含め、入院や死後の手続に関する支援まで扱う事業になります。

次に、成年後見などの相談体制です。これまでの相談・調整の取組を、市町村の役割として社会福祉法に明記します。新しい相談機能を一から作るだけの話ではなく、既存の取組を法律に位置づけ、整備を進める変更です。

そして、有料老人ホームです。従来からの監督に加えて、一定のホームに登録と更新を求め、契約・運営について法律で定める事項を増やします。

ただし、法律で方向が決まったことと、その地域で新しい支援を利用できることは別です。対象者の具体的な基準や事業の詳細を定め、施行に向けた準備を進める必要があります。

7.施行時期は、改正事項によって異なる

今回の改正は、原則として2027年4月1日施行ですが、一部は公布時に施行され、別の時期に施行される事項もあります。

この記事に関係する主な時期は、次のとおりです。

主な変更施行時期
市町村の成年後見などに関する相談・調整、地域権利擁護相談支援センターの規定2027年4月1日
ケアマネジャーの更新制の廃止公布から1年6か月以内に、政令で定める日
福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業への拡充公布から2年以内に、政令で定める日
一定の有料老人ホームの登録制度など公布から2年以内に、政令で定める日
登録対象ホームの入居者に関する新たな介護支援公布から3年以内に、政令で定める日

公布されたからといって、すべての変更がすぐに適用されるわけではありません。それぞれの施行までは、原則として従来の仕組みが続きます。www.mhlw.go.jp

8.今回の改正をどう評価するか

ここからは、私自身の考えです。

今回の改正は、家族や地域の支えが少なくなり、サービスの担い手も不足する中で、従来の制度では対応しきれなくなった部分を見直すものと受け止めています。

相続・終活の分野で特に意味があるのは、本人が判断できるかどうかだけでなく、実際に手伝う人がいるかどうかにも着目したことです。

自分で希望を決められても、入院時の連絡を受ける人や、亡くなった後の手続を行う人が必要になることはあります。従来の支援を広げ、そうした仕事を福祉の事業として扱う方向を、私は評価しています。

同時に、今回は対象者の条件も変わります。誰が利用でき、どの仕事を頼めるのか。従来の利用者はどうなるのか。費用をどのように負担するのか。改正の目的だけでなく、具体的な条件まで確認する必要があります。

家族に頼れず、費用の負担にも困っている人が、実際に利用できる制度になるか。施行に向けた制度づくりを確認していきたいと思います。


参照資料

※本記事は、2026年6月25日の公布時点で確認できる改正内容を説明するものです。